Miseria ~幸せな悲劇~
そして、現在。6月25日。この日から着々と風花の生命維持装置を外す手続きが進んでいた。
すでに風花の回復を信じる者は美花だけだった。
「関係ないって、あなた達親友同士じゃない……」
恵が美花に言った。
「私だってできる限り美花の力になってあげたいけれど、それでも……親友にしか癒せないキズだってあるはずでしょ……?」
「…………」
美花は黙って恵の話を聞いた。その間にも、彼女の中で押し込めていた感情が徐々に美花を支配する。
「美花はすごく強いけれど、あなた一人ですべてを抱え込む必要はないのよ……吐き出したい気持ちも全部、みんなにぶつけたっていいの……あなたは一人じゃないんだから……」
恵は美花にできるだけ優しく言葉を投げかけたつもりだっただろうが、美花にはそれがどうしようもなくうざったく思えた。
美花の心はすでに限界だった。自分を見失い、わめき散らしたくなるような激情を押し込め、自分の感情をコントロールすることで精一杯だった。
他人の言葉を美花は聞き入れるほどの余裕はなかった。