Miseria ~幸せな悲劇~
恵はとっさにその袋を手にとった。
「なに、これ?」
恵は最初、不思議そうにその袋を見ていたが、すぐに何かを察したようにゾッとした表情を浮かべた。
「か、返せよ!」
美花はすぐさま恵の手からその袋を奪い返した。
「あなた、まさか……」
恵はそう言いかけたが、美花はそっぽを向いて駆けていってしまった。
「美花、ちょっと…!」
恵の声にも、美花は一切振り返らなかった。そのまま美花は、逃げ出すように学校を立ち去った。
美花は誰もいない雑木林の影に身を潜め、地面に顔を埋めると、言葉にならない金切り声を上げて叫んだ。
近くにある海辺の波音を切り裂くような声だったが、その叫びに気がつくものは誰もいなかった。