Miseria ~幸せな悲劇~
「だめ………触らないで…」
「!!!!!」
大野が人形に触れようとした瞬間、大野を呼ぶかすれた女の声が聞こえてきた。
「……お、おまえが、どうしてここに…」
大野はその声に聞き覚えがあった。彼女の夢の中で出会った少女の声にそっくりだった。
ありえない。そんな気持ちが大野を過る。
大野の目の前に黒いドレスのスカートが見えた。まさか、こいつは…
「また会ったわね。大野怜…」
目の前の少女は静かな声で大野に呼びかけた。恐怖に震えながら大野はゆっくりと視線をあげる。そこには、青白くも美しい、一人の少女の姿があった。