Miseria ~幸せな悲劇~
翌日、メイは凪瀬校で大野の火事について祐希と話していた。祐希の口から語られたのは、出火の原因に関する警察からの見解だった。
「えっ! 大野先輩が放火……?」
メイは驚いた様子で祐希に尋ねた。
「………うん、さっき先生達が話してるのを聞いたんだけど……昨日の火事のこと、警察の人は大野先輩が自分で火をつけたって決めつけてるんだって…」
「そんな、まさか……」
いくらあの横柄な大野のこととは言え、にわかには信じられない話だった。だいたい、右足を完治させて有頂天だった大野がそんなことをするだろうか……? メイは一連の出来事に不信感を抱いた。
「………それで、大野先輩は今日学校には来てるの?」
「ううん、目が覚めてからずっと警察署で取り調べを受けてるって……」
祐希が弱々しく言った。とりあえず、大野は無事のようだが、火事の直後に警察に尋問を受けるとは、大野も災難だとメイは思った。
「………そっか」
メイは昨日の火事の様子を一つ一つ頭の中でたどってみた。燃え盛る炎。そして、あの大野の姿を模した人形。不審な点は多々あったが、それでもやはり一番に違和感を覚えたのは彼女のことであった。
「………放火、ね……」
大野を含め、誰が犯人なのかは分からない。が、出火の原因が放火と確定したのならば、あのとき、急に顔色を変えて逃げた彼女のことが、どうしてもメイの頭にこびりついていた。
そこへ、