Miseria ~幸せな悲劇~

「うわああああ……!!」


美花は思わずその光景に目を見張った。


「…………」


部屋の真ん中にはセーラー服を着た黒髪の少女が血まみれで佇んでいる。


男性、女性、そして子供もいる。少女のまわりには、首をくくって吊るされたたくさんの人間の姿があった。


「なんで…? 私を…………」


少女は恨めしそうな声でそう言った。フラりと体を揺らしながら、美花の方をゆっくりと振り返る。


「……やめろ、やめろ!!!!!」


美花が叫ぶと同時に、吊るされた人間の身体から一斉に炎が上がった。


炎は部屋中に引火し、すぐに美花は立ち込める炎の中心に立たされていた。


「やめろ! やめろ……!!!」


美花は凄まじい恐怖を感じた。


それは自分を焼き殺さんとする炎にでも、その炎に焼かれる人間の死相にでもない。血で真っ赤に染まった、黒髪の少女。彼女に対する耐え難い恐怖心だ。
< 99 / 394 >

この作品をシェア

pagetop