君だから。
「ありがとう…」


うつむきつつ私は呟いた。


「ねぇねぇ、葵ちゃんって呼んでもいい?」


「へ?」


九条くんの突然の発言に私はびっくりして変な返事をしてしまった。


「ダメ…かな?」


また九条くんは寂しそうな顔をして私を見つめた。



ズキッ────



まただ。そんな、切なそうな顔をされると断れなくなってしまう。


まあ、断るつもりはなかったけど…


「いいよ」


そして、私はそう返事をした。


「やった!」


そう言って九条くんはなぜか嬉しそうに笑う。


なんだか、すごく気さくな人だなぁ。


調子狂っちゃうよ…。


「俺のこともさ、晴翔って呼んで?」


私、男の子のことを下の名前で呼んだことないんだけどなぁ…。


そう思いつつも私は九条くんの名前を呼んでみた。


「はる…とくん。」


あぁ、やっぱりうまく言えないや。


でも、晴翔くんはニッと笑って────


「こっちの方がいいね。なんか、葵ちゃんと仲良くなれた気がする」

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