君だから。


「お兄さんと住んでるんだね。それだったら料理とか大変だよね」


「そうなんだよーもう、ほんとこっち来て母さんのありがたさを知ったよ」


そう言って晴翔くんは困ったように苦笑いした。


苦労人なんだなぁ


晴翔くんは一見苦労なんてして無さそうに見えるけどお兄さんと二人で暮らしていて、なんだか驚いてしまった。


こんなこと私に教えていいのかな?


ふと、そんな事が気になってしまった。


今日知り合ったばかりなのに…。


でも、なんだか私は晴翔くんのことを知れて嬉しい気がした────


それから、私たちは無駄話もしながら二階、三階、四階と回った。


そして、また教室に戻ってきた。


「いやー、ありがと!葵ちゃん」


「いえいえ。どういたしまして」


晴翔くんは満足そうに私にお礼をしてくれた。


そして────


「すっかり暗くなっちゃったよね。家まで送らせて?今日のお礼に」


え?


い、家まで送ってくれるの?


私は頭の中でそう思ってしまう。


私なんかと帰ってもいいのだろうか?


ついついそんなことを考えてしまう。
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