君だから。


さすがファンサービスがすごいなと思ってみていると


「葵〜。ほらほら九条くんが葵のこと見て笑ってるよ〜」


「え?」


凛が突然変なことを言うから私はびっくりして間の抜けた返事をしてしまう。


いやいや、そんなわけないよ。


私じゃなくてみんなに向けてだよ。



「そんな、こんな大勢いるのに私なんか見て笑わないって〜」


私がそう返すと凛は楽しそうに


「えー、そうかなー?」


なんて言っている。


凛もそうだけど友梨奈ちゃんも梓ちゃんも晴翔くんが私に気があるんじゃないかって最近はこの話題で持ちきりだった。


そんなことないと思うんだけどなぁ。


だって、晴翔くんはかっこよくてあんなにモテるのにわざわざ私のことを好きになんてならないと思う。


私なんて地味で冴えないのに────


私がいくら否定してもみんなは信じてくれない。


気持ちは嬉しいんだけどなぁ。


ダンっ────


シュっ────


『きゃあぁ〜!』


『晴翔くん〜!』


私がそんな考え事をしている間にも晴翔くんのシュートが決まる。


一体、どれだけ決めるのだろう。


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