君だから。
「ううん、大丈夫。予定ないから」
いつもは凛と一緒に帰っているが、今日は凛は彼氏とデートの日で、私には特に予定がなかった。
私の返事を聞くと、九条くんは嬉しそうにまた笑って。
「ほんと?よかった! 学校のこととかいろいろ教えて欲しかったんだ」
「その、教室で待ってるね」
「うん、わかった。ありがとね七瀬さんっ」
九条くんは明るく返事をする。
話し方も見た目もチャラいのに不思議と九条くんは嫌な感じが全くしなかった。
普段ならこういう目立つ人は苦手なはずなのに────
「ねえねえ、九条くんっ!」
私がそんなことを考えていると突然甲高い声とともにたくさんの女子たちが九条くんの席に集まってきた。
「どこから来たのー?」
「藤丘高校から来たんだ」
「へぇ〜!名門じゃん!なんで転校してきたのー?」
「えーっと、それは秘密」
「えー!!」
女子たちは不満そうに抗議した。