嫌いな体


私は引き出しからハサミを取り出した。
私は自分の髪を手で握る。


そして、私はハサミを開き、髪へ近づかせた。


――ザクッ
私の長かった髪は一気に床へと散った。


――ザクッ、ザクッ
次々と髪を切っていく。


――ザクッ‥
切り終えた私は、見事なショートヘヤーになっていた。


次に服を探り出す。
私は服を力いっぱい両手で握り


――ビリッ
真っ二つに服は破かれた。


次々に私は女の物を捨てた。
自分を捨てるように。


「はぁはぁ‥」


破かれた物で部屋はめちゃくちゃになっていた。


そして、ひとつ捨てられない物を手にした。


「――っ!うっ‥あぁ‥っ!」


私は崩れ落ちて泣いた。
自分を捨てる儀式とも言えよう。
私はこの涙が枯れるまで泣いた。
もう、涙がでないよう。


これは、最後の涙だ。


私は家を出た。
もうこんな家にいない。

家を捨てた。
私を捨てた。
女を捨て、
私は‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥俺は‥‥



    "男"になる。


この日から俺は男になった。


 

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