極悪プリンスの恋愛事情
「お前さ、わりと本気できもいんだけど」
「ひゃあ!?」
絶賛浮かれ中だった私の背後から、当事者の凛くんが現れた。
ショーウィンドウ越しでも伝わる冷たい視線が私の羞恥心を煽ってくる。
その現実は振り向いても変わらない。
大袈裟にため息を吐きながら「きもすぎて声掛ける前に帰ろうかと思った」と、きつい一言。
「わー!ごめんなさいごめんなさい!大人しくするから帰らないで!!!」
「うるせーな。帰んねーよ」
必死に腕を掴んだら呆気なく振り払われた。
せっかくのデートなのに初手でやらかすとは、なんという失態。
早く挽回してラブラブデートを目指さなきゃ……!
「んで、どこ行くか決めてんの?」
顔色ひとつ変えずに凛くんが問いかける。
鞄からチケットを取り出して「これ!」と、凛くんの前に突き出した。
「なんだ映画か。随分と地味だな」
「初デートは映画がオススメって雑誌に載ってたから……………じゃなくて、泣けるって話題だったから気になってて!」
「ふーん」