極悪プリンスの恋愛事情
*
「凛くん、何か食べたいものとかある?」
映画館に着くや否や、凛くんに向かって食い気味に問いかけた。
さっきの失態を取り返そうと私も必死なのである。
「別に何もいらねー」
けれど、凛くんは私の気持ちを1ミリも汲み取ってはくれない。
あっという間に会話を切られてもはやなす術なし。
うぅ…………辛い。
映画が始まるまで時間あるし、その間にこの歪な空気をどうにかできないかなぁ………。
「花野井こそなんか食いたいもんねーの?買ってやるけど」
「え?」
「俺映画代払ってねーし、花野井ってなんかすぐ腹減りそうじゃん」
「そんな食い意地張ってないよ……!?」
映画代のことを気にしてくれて優しいと思えたのはほんの一瞬。
私に対するイメージが最悪すぎてグサっときた。