極悪プリンスの恋愛事情
「飲まねーの?」
ドリンクを持ったまま動かない私に対して凛くんが問いかける。
もったいなくて飲めないと正直に話したら、きっと呆れられるんだろうな。
「飲みます……!」
謎の宣言をしてから直ぐさまストローを口に加えた。
そんな見られてると飲みにくいんですが……。
緊張しながらようやく一口飲み込んだ。
あれ、この味って………。
「オレンジティーだ!」
大好きな味に驚いて思わず声に出ていた。
「あぁ、なんか期間限定らしいな」
「へー、そうなんだ!私オレンジティー大好きなんだよね」
「知ってる。だからそれにした」
「なんで私がオレンジティー好きなの知ってるの!?」
「なんでって、いつも飲んでるから」
少し考えてからハッとした。
中庭にいる凛くんに会いに行くときは、いつもオレンジティーを買った後に行っていたから、たぶんそれで覚えてくれていたんだと思う。
以前まではオレンジティーを買うために中庭まで行ってたのに、今じゃ凛くんに会うことがメインで飲み物は二の次になってしまっている。
無意識に覚えられてしまうほど凛くんに会いに行っていたんだと気付かされて、少しだけ照れ臭い。
「美味しいからつい買っちゃうんだよね!!!凛くんもよかったら飲む!?」
そんな羞恥心を紛らわすように、わざとらしく凛くんにドリンクを差し出した。