極悪プリンスの恋愛事情
ピタリと凛くんの足が止まった。
眉間に寄ったシワが更に深くなっていくのが遠目でもわかった。
「あんなの……ただの気まぐれだから」
聞き覚えのある台詞に思わず反応しそうになる。
脳裏に焼きついた”あの日”の光景がフラッシュバックして息が詰まりそう。
髪の毛をぐしゃりと握りつぶし、やるせ無い気持ちを抑え込んだ。
「私にも気まぐれしてほしいなぁ」
「こっちはずっと待ってるのに〜!」
甘ったるい声で絡みつくファンの子たち。
いつもと同じように振り払って、冷たい言葉吐いて、どこかへ行ってしまうんだろうと……思っていたのに。
「───なら、お前らとも遊んでやろっか?」
…………え。
騒ぎ出すファンの子たちにかき消されてしまったが、今の言葉は間違いなく凛くんの口から溢れたものだった。