極悪プリンスの恋愛事情
「あ、いや……その……やっぱり………また今度にしようかな……」
女の子がそう言うと、周りの子たちも賛同するように「その方がいいよ」と声をかけていた。
恐らく凛くんファンの間では抜け駆け禁止!とか、そういうルールがあるんだと思う。
勝手な行動をするなら次はお前の番だと言わんばかりの視線が恐ろしい。
私もファンの子たちと一緒にいたら同調圧力に屈してたのかな……と考えてしまった。
「ふーん、まぁいいや」
当事者の凛くんは彼女らの争いに興味がないらしい。
いつも通りの気怠けな態度でため息を吐く姿に少しだけ安堵する。
「とにかく今後花野井に手出すなよ。厄介ごと増やしたやつには俺も容赦しねーから」
冷たい眼差しを向けられたファンの子たちは、お互いの顔を見合わせて深く頷く。
そして、反対側のドアから逃げるように去って行った。