極悪プリンスの恋愛事情
別に岸本くんのことを考えなかったわけじゃない。
実際、皐月と凛くんの分以外にもクッキーは余ってた。
だけど、ここで岸本くんに友達としてあげるのは違う気がしたから。
「まぁ、仕方ないか。来年に期待しておくね」
「来年だってあげないよ!」
「俺に期待してほしくないならさっさと凛に渡してきなよ」
「でも、だって……凛くん見つからないし……」
「本当にちゃんと探したの?」
核心をつくような言葉にドキッとした。
保健室も屋上も空き教室も校内中全部見て回ったつもり。
中庭だけ行けてないのは……わざとじゃない。
「急にどうしちゃったの。いつもの花野井ちゃんらしくないよ」
「……自分でもそう思う」
ファンの子たちに怖気付いたわけでも自信をなくしたわけでもない。
ただ、少しだけ────。