極悪プリンスの恋愛事情
けれど、植え付けられたトラウマはいつだって不条理に俺の心をかき乱す。
『───久しぶりだね、凛』
俺には花野井と一緒にいる資格がないんだと思い知らされた。
たとえこの瞬間に真央と会っていなくても、いつか同じ未来が訪れていたはず。
何が忘れられるだ。浮かれてんじゃねーよ。
好きな人を傷つけてまで望むものなんて………あるわけないんだから。
もう、この恋は終わりにしよう。
ここが彼女に近づける限界だ。
傷つけたくなくて、辛い思いをさせたくなくて遠ざけたはずなのに、花野井を泣かせているのはいつだって俺だった。
適当な正義を振りかざしていたいたけれど、本当は俺の側から離れていくのが怖いだけ。
だから、いなくなってしまう前に自分から手放した。
臆病で、弱虫で、どうしようもなく情けないやつなんだよ。
花野井にだけは本当のことを言いたいのに。
あと一歩、踏み出せない。