極悪プリンスの恋愛事情
呼びかけても返事はない。
何か言いたそうにしてるのに、黙ったまま。
「岸本くん………?」
もう一度声をかけたらゆっくりと手が離れた。
答えを求めるように見つめると、岸本くんは穏やかな笑みを浮かべていた。
「───いってらっしゃい」
甘く澄み透った迷いのない声。
これ以上詮索する必要はないと……言われてるような気がした。
「…………うん、いってきます!」
岸本くんに背を向けてもう一度走り出した。
早く行かなきゃ。急がなきゃ。
言いたいことありすぎて頭の中パンクしそうだよっ………。