極悪プリンスの恋愛事情


「あの威圧はトラウマレベルだろうな」

「じゃあ、凛くんが女嫌いになったのって、文化祭が原因なの?」


トラウマレベルに騒がれたなら納得がいく。

けれど岸本くんは一瞬苦い顔をしてから、首を横に振った。



「たしかにそれも一理あるんだろうけど、本当は真央(まお)が──────」


「岸本くーん!後夜祭のことで話しがあるんだけど、今いいかな?」


えっ。

肝心なところを聞く前に、駆け寄って来た女の子に話を遮られてしまった。


「あー、わかった。ごめん花野井ちゃん、俺行くわ」

「ちょっと!岸本くん!?」


私の声には聞く耳持たずで、女の子と一緒に廊下の奥へと消えていく。


取り残された私は、離れていく2人の背中を見ていることしかできなかった。

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