お見合い結婚狂騒曲
ーーそして、来たる日曜日。
予定は変更されることなく、私は迎えに来たリムジンに乗り、仲人の土田さんと共に見合い会場に向かう。
今日は着物ではなく、淡いベージュのスーツを着せられた。但し、自分では絶対に買えない高価なブランド物だ。だからか、緊張で背筋が伸びる。
「すっかりクリスマス一色ですね」
確かに。車窓を流れる景色は、いつも以上に鮮やかな色を持ち、煌びやかな光を放っていた。
「宝石箱をひっくり返したみたいですね」
ポツリと言うと、土田さんがクスリと笑う。
「私、赤尾さんの、そういう感性好きです。私には無いものですから……」
弁護士として、第一線で働いてきた彼女らしくない物言いだった。
怪訝な私の様子を感じ取ったのか、土田さんが言う。
「子供って感性の塊なんです。時々、そういう所が理解できなくて……イラッとして、声を荒げちゃう事があるんです」
それが母親失格みたいで悲しい、と土田さんが顔を歪めながら自嘲する。
「ーーでも……その後、土田さんはお子さんを抱き締めてあげるんでしょう」
思い浮かんだ情景を言葉にする。
「だったら、全然大丈夫です。愛がそこにあるって子供は分かるから」
祖母のギューッは何よりも温かかった。
土田さんの顔が見る間に明るくなる。
「ごめんなさい。お客様である赤尾さんにプライベートな愚痴なんて聞かせて」
普段の彼女は仕事に厳しく公私混同しない。余程、切羽詰まった思いがあったのだろう。
予定は変更されることなく、私は迎えに来たリムジンに乗り、仲人の土田さんと共に見合い会場に向かう。
今日は着物ではなく、淡いベージュのスーツを着せられた。但し、自分では絶対に買えない高価なブランド物だ。だからか、緊張で背筋が伸びる。
「すっかりクリスマス一色ですね」
確かに。車窓を流れる景色は、いつも以上に鮮やかな色を持ち、煌びやかな光を放っていた。
「宝石箱をひっくり返したみたいですね」
ポツリと言うと、土田さんがクスリと笑う。
「私、赤尾さんの、そういう感性好きです。私には無いものですから……」
弁護士として、第一線で働いてきた彼女らしくない物言いだった。
怪訝な私の様子を感じ取ったのか、土田さんが言う。
「子供って感性の塊なんです。時々、そういう所が理解できなくて……イラッとして、声を荒げちゃう事があるんです」
それが母親失格みたいで悲しい、と土田さんが顔を歪めながら自嘲する。
「ーーでも……その後、土田さんはお子さんを抱き締めてあげるんでしょう」
思い浮かんだ情景を言葉にする。
「だったら、全然大丈夫です。愛がそこにあるって子供は分かるから」
祖母のギューッは何よりも温かかった。
土田さんの顔が見る間に明るくなる。
「ごめんなさい。お客様である赤尾さんにプライベートな愚痴なんて聞かせて」
普段の彼女は仕事に厳しく公私混同しない。余程、切羽詰まった思いがあったのだろう。