お見合い結婚狂騒曲
公香は言いたいことだけ言うと、寝不足はお肌に悪いから、とサッサと電話を切る。

本当、何て自由な女なんだ。

それにしても……葛城圭介に加え、公香かぁ……明日が来なければいいのに、と見えない星に願いを呟き、歯磨きをすると早々ベッドに入る。



ーー見えなかったはずだ。翌日は雨だった。
こういう時、住まいと職場が同じ場所というのはイイ。

パチンとテレビをつけ、身支度を整えるとキッチンに行き、まずお湯を沸かす。

「そうだ、今日の昼食と夕食は」

携帯を開き、レストラン『ME』十二月の献立、の文字をタップする。
レストラン『ME』は、未食ビルの一階にあり、未食調理師学校の実習の場となっている。

昼食作りは授業の一環で必須。担当月は、無料で昼食が食べられる。
夕食作りは希望者のみだが、バイト代が出るので申し込み人数は半端なく多い。月一回開催される抽選会はお祭り騒ぎのように賑やかだ。

会長曰く、それもこれも、苦学生への配慮だそうだ。こういった心遣いが、少子化の中にあっても、生徒数を比較的安定確保できる所以なのだろう。
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