お見合い結婚狂騒曲
「どういう意味でしょう」と訊くと、「祖父も自分も超多忙で、スケジュールを合わせるのが大変なのだ」と言う。で、直近で偶然マッチしたのが、今週末だったらしい。

「まさかフラれるとは思ってもいなかったからな」

その自信はどこから来るのだろう……言葉もない。

「フラれたと言って祖父に弱みを見せたくない。見せれば、即座に許嫁と結婚させられる」

ちょっと待ったぁ!

「許嫁がいるのに……浮気しているんですか!」

この男、もう、メチャクチャだ。

「否違う。許嫁とは結婚しない。結婚相手は自力で探すと宣言してある。祖父も承知の上だ」

よく分からない展開だ。

「では、その許嫁さんとやらも納得されているんですね?」

「彼女は……」とアンドロイドの眼が不自然に泳ぐ。

「まだ十六歳だ。だから、彼女の意見を聞く必要はない」

十六! それ犯罪だろ! とツッコミそうになる。

「だから、僕が結婚したら、この件は無効になる。いくら僕でも二十も離れた子は無理だ」

どのような経緯で、そういう話になったのかは分からないが……どうやら、アンドロイド葛城圭介は、今、最大のピンチらしい。

「だから、私でもいいから今週末付き合って欲しいということですね」
< 29 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop