お見合い結婚狂騒曲
「やだぁ、玉の輿。天下の葛城一族よ、瓢箪から駒じゃない」

瓢箪から駒、確か『思いがけないことや、あり得ないことが起こること』という意味だったなと思い出し、嬉々とする公香を薄い目で見る。

「思いがけないことも、有りえないことも起こらないから」
「ん、何だって？」
「だから、玉の輿なんて有り得ないから！」

低く黒い声に、公香の涼しげな目がパチパチと瞬く。

「どうして？　お爺様が真央を気に入ったら、即嫁じゃないの？　違う？」

なぜ真斗さんの方を向いて言うのだ。

「おそらくそうなるだろうね」

当然のように真斗さんが答える。

「ちょっと待って下さい。それでは『見合い屋』の立場がありません」

土田さんが憤慨する。

「臨機応変という言葉があるじゃないですか。『見合い屋』の規則は法律じゃない。でしょう？」

パチンと綺麗なウインクをし、真斗さんはコーヒーを啜る。
食えない奴。

「ーー分かりました。その代わり、逐一ご報告下さい。何か事があった場合、仲人である私が知らないでは示しがつきません。それに……何かあった場合、貴女を守る事ができません」

土田さんの真摯な瞳が、真っ直ぐ私を見つめる。
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