お見合い結婚狂騒曲
あれ? 十六歳の許嫁のことを知っているの?
私の反応に、花香さんも同じことを思ったようだ。

悪戯っぽい笑みを浮かべると、「この後、社長室に来てね」と耳元で囁く。

フェロモンダダ漏れの声が、直に鼓膜を震わせ、肌が粟立つ。
危ない、女同士だけど、イケナイ道に走りそうだ。

フルフルと頭を振り、「はい」と返事をする。



社長室に呼ばれたのは私だけではなかった。

「そうか、許嫁のこと、知ってたんだ」

真斗さんもだった。

「土田さんの手前、言えなかったけど、圭介に協力してやって。頼まれたんだろ、今回の件」

お見通しのようだ。

「本当、瑠璃ちゃんにも困ったものね」
「嗚呼、あの小悪魔には参るよ」

話が見えない。
「あのぉ」と挙手する。

「瑠璃ちゃんとは、許嫁さんの名前ですか?」
「あら、どこまで知っているの?」

確認を取った上で花香さんが話し始める。

「瑠璃ちゃんは主人の親戚内に当たる子で、真斗とは再従兄弟だったかしら、そんな関係になるの」

ということは、瑠璃っていう子もお嬢様なのだな、と結論づける。
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