お見合い結婚狂騒曲
「やだ、そんなことしないで下さい。分かりました。大丈夫です。今週末、ちゃんと会いますから、そのお祖父さんに」

ありがとう、と花香さんがシッカと手を握る。
その柔らかな感触に、カッと頬が熱くなる。
その気は全くないはずだけど、本当、ヤバイかも。

ドギマギしている私に花香さんが力強く言う。

「全面的にバックアップするから安心して。真斗もそのつもりでね」
「ラジャー!」

二人の眼がキランと光ったように見えたが……気のせい?
ーーではなかった。



「お迎えにあがりました」

今日もまたぁ!

終業時間ピッタリに事務室に現れた執事のような彼は、本物の花香さん家の執事兼運転手さん。登場は今日で三日目。

南ちゃんと大久保さんが目配せし合いクスクス笑う。
言いたいことは分かる。言わないでいてくれる心遣いに感謝だ。
だが、桂木主任は……。

「赤尾さん、いつから執事付きになったんだい」

デリカシーに欠けた男だった。
「一昨日からです!」もう、ヤケだ!

そう、花香さんは有言実行の人だった。

一昨日、突然、執事さんが現れた。
何度か見かけたことがあるので、その存在は知っていた。
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