お見合い結婚狂騒曲
葛城圭介の言葉は本当だった。
ベンツが到着したのは空港。そこで目にしたのは……。

「プライベートジェット!」

葛城圭介は、「行くぞ!」と、固まる私の手を引き、悠々と飛行機に乗り込む。

「早くシートベルトを締めろ」
「ーーこれ、葛城家のモノって言いませんよね」

我に返り、間髪入れず訊く。
一機何十億だかすると聞いたことがある。維持費だって億単位だったような……。

「当たり前だ」

その返事にホッしたのも束の間。

「祖父の代までは持っていたが、税理士と相談した結果、チャーターする方が安上がりと分かり手放した」

ーーやっぱり持っていたんだ……眩暈がする。

「その代わり、ヘリコプターを主要都市の支店に置いた。時々、ドクターヘリの代わりに地域貢献しているらしいから、変更して良かったと思っている」

各支店にヘリコプター……もしかしたら、私は葛城圭介を、物凄ぉぉく侮っていたのかもしれない。

飛行中、ずっと放心状態の私だったが、北海道まで一時間少々、乗務員さんの至れり尽くせりのサービスで、空の旅は快適だったのは言うまでもない。
< 47 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop