お見合い結婚狂騒曲
「お祖父さんは、北海道の支店にいらっしゃるんですか?」

空港には、雪道に強い、と言われている4WDの国産車が迎えに来ていた。

「否、違う。祖父は雪を取りに来た」

ーーイマイチ意味不明だ。

「雪をどうされるんですか?」
「クリスマスの催しに使うらしい」

何となく、これ以上聞いても理解できなさそうなので、ハァと曖昧に返事をし、この話は〆ておく。

「ところで、君のことを『真央』と呼び捨てにしようと思う」

いきなりですか。

「まぁ、お祖父さんの前でフルネームもおかしいですしね。いいですよ」
「君は『圭介君』と呼んでくれ」

そっちは『君』付けですか、小学生みたいだな、と思っていると……。

「祖父と亡くなった祖母が、そう呼び合っていた」

なんか突然、深イイ話じゃないですか!

「了解しました、圭介君」

ーーん、あれ? 赤くなった?

葛城圭介が、キリキリと機械仕掛けの人形のように、こちらに顔だけ向ける。

「ーーもう一度呼んでくれ」
「エッ、ハァ、了解しました……圭介君」

エッ、エッ、何、嘘っ! アンドロイドが……笑ったぁ?
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