お見合い結婚狂騒曲
「前々から思っていたのだが、やはりだった」

葛城圭介が納得気に一人ウンウン頷く。

「何がやはりなのでしょう?」
「君の声は、祖母の声にソックリだ、ということがだよ」

へーっ、ドッペルゲンガー? と思ったが、アレは姿形のことか、と思い直す。

「祖母は、祖父のことも僕のことも『君』付けで呼んでいてね、祖母に呼ばれたようで嬉しかった」

フッとまた笑みが浮かぶ。

ウッ、まっ眩しい! 何だ、この武器は! ドクドクと鼓動が速くなる。
慌てて視線を車窓に向け、意識を彼から逃す。

いやはや、イケメンとは恐ろしい生き物だ。魔力でも持っているのか?
全く眼中に無い男なのに、今、一瞬、トキめいた。怖い怖い!

「祖父も喜ぶと思う。ちなみに祖父の名は『圭吾』と言う」

それはお祖父さんのことも『圭吾君』と呼べと言っているのか?

聞こえないフリをして景色を見続けるが、行けども行けども白い風景に、より頭がクリアになり、さっきの笑みがエンドレスに浮かんでは消える。

きっとこれは、ギャップマジックという名の呪いだ。しっかりしろ、赤尾真央!
コツンと冷たい窓に額を打ち付ける。

これ以上、惑わされないようにしなければ。
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