お見合い結婚狂騒曲
一人悶々としていると、車が白の世界の中でいきなり停まる。

「着いた。大人しかったが、寝ていたのか?」

「あっ、すみませんでした」と大きな欠伸をワザと作り、誤魔化す。

「これを着るといい」

突然押し付けられたのは、ファーの付いた真っ白なロングコートだった。

「あの、これ?」
「用意させた。十二月の北海道だ。ペラペラのコートで凍死されたら困る」

そういえば、助手席にリボンのかかった箱が何個か置いてあった。
それがコレ?

イヤイヤ、それなら、事前に言ってくれたら完璧な防寒スタイルで来たのに、と思うが……コートの手触りの良さに思わずウットリする。

「それと、これに履き替えて」

真っ白なブーツが足元に置かれる。
内側がモコモコしている。温かそう。

「ーー用意できたな。じゃあ、出るぞ」

ドアが開けられた途端、寒気が襲う。
ウワァッ、メチャ寒い! 頬がヒリヒリ痛い。

葛城圭介が歩き出す。後ろ姿を見ながら、防寒姿も完璧だなぁ、と感心しながら後に続く。きっと、彼が着たら、ボロボロの浮浪者スタイルもパリコレスタイルになるだろう。

ーーなどと腐らないことを考えていると、「祖父様ぁー」と突然、葛城圭介が声を張り上げる。
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