お見合い結婚狂騒曲
「そう、行ってもつまらないのよ。長話を聞くだけだから。で、毎回、葛城さんを連れていくわけ。時間潰しに。まぁ、今でこそ、仕事が多忙で、そういうのは無くなったんだけどね」

フーン、あの葛城圭介が黙って真斗さんに従っていたんだ。弱みでも握られていたのか?

「でね、お祖父様は葛城さんの事も気に入っていて、当時、まだ三歳だった瑠璃に、『こういう奴と結婚しろ』と再三言っていたらしいわ」

刷り込み……洗脳……されたということだろうか?

「まぁ、でも、お祖父様も、二十も離れた二人をどうかしよう、なんていう気はサラサラなかったみたいだけど、瑠璃はそうではなかったみたい」

なるほど、三つ子の魂百までも……か。
きっと瑠璃嬢の初恋の相手なのだろう。その相手に相手をされない。ムキになるはずだ。

「で、真央も聞いた通り、諦め切れずに、フィアンセに名乗りを上げたということらしいわ」

全く! と再びグラスを手に取り、公香は呑み始める。

「ーーねぇ、ちょっと気になる事が有るんだけど」
「何?」

『追々分かると思うけど……圭介って色々訳ありでさぁ』
真斗さんの言葉が蘇る。

「葛城圭介って過去に何かあったの?」
「過去?」

公香が訊ね返す。演技している様子はない。本当に知らないらしい。
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