お見合い結婚狂騒曲

「ーーいいの。気にしないで。ただちょっとね、どうしてああも鉄仮面なんだろうって思っただけ」

フーンと気の無い返事をし、アッと何か思い出したように、公香が声を上げる。

「そう言えば、随分前に真斗が変な事を言ったわ。圭介の親父は怪物だとか何とか」

思わず口走ったみたいで、すぐ誤魔化した、と公香が言う。

「でも、葛城さんのお父様って、キッチン葛城の親会社である葛城フーズインターナショナル現社長、葛城圭一よ」

その名は天と地ほど離れた世界で生きている私でも知っている名前だった。やり手だが、人望厚く人々に慕われていると聞く。

「まぁ、あれだけの人だから、ある意味、怪物には違い無いけど、あの時の真斗の言い方には、憎しみみたいなものが込もっていたのよね。だから、あの『親父』は葛城圭一じゃなく別の誰かだと思うのよ」

ミステリーやオカルト好きの公香らしい発言だ。

「相変わらず推理好きね」
「貴女みたいに、恋愛小説を人生のバイブルにしていないだけマシよ」

フン、どうとでも言ってくれ、リア充め！