お見合い結婚狂騒曲
ウッ、普段以上の攻撃力だ。
急にドクドクと心臓が鼓動を速める。

「ーーこっ子供じゃないんですから、お一人でごゆっくり!」
「いいな、こうやって話していると祖母を思い出す」

外に出ようと思っていた足が止まる。
ーー瑠璃嬢が、彼はお祖母様っ子だったと言っていた。

なるほど本当だ、と思った瞬間、「まっ、祖母はもっと優し気だったがな」とカラカラ笑う声が聞こえてきた。

ナヌ! と浴室を睨みつつ、あれっ? と思う。
大笑いしている。

「圭介君」とあえて呼んでみる。

「貴方……笑えたのね」

声がひとりでに零れる。

「ーー前にも聞いたなぁ、その言葉。本当に……祖母だ」

驚きと懐かしさが入り混じった声が、ドア越しにしみじみと言う。
その声が、涙ぐんでいるように思えた。

「ーーお祖母様のこと、大好きだったんですね」

「嗚呼」と素直な答えが返ってくる。

どうしたのだろう。今すぐにでも抱き締めてあげたい。そんな欲求に駆られた自分に自分が驚く。
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