お見合い結婚狂騒曲
葛城圭介は、世界各国の主要都市に支店を置く、高級老舗洋食屋『キッチン葛城』の社長でもあり、更に言えば、その親会社である葛城フーズインターナショナルの次期後継者、言わば御曹司でもある。
三十六歳、独身、そして、このマスクだ、話題に上らないわけがない。彼が載った雑誌を何度か見たことがある。
彼を特別講師に推薦したのは、御年六十八歳ながら少女のような味食会長夫人。
夫人宣わく、「彼ね、社長でもあるけど、ヨーロッパの三つ星レストランで修行を積んだ料理人でもあるの。それを眠らせちゃうのは惜しいでしょ」だそうだ。
夫人の願いは叶い、葛城圭介が颯爽と講師デビューしたのが五年前、くしくも私がアイツにフラれた年だ。明と暗。本当に彼と私は水と油だ。そんなこんなで、苦手意識は募るばかりだった。
「また、隣のビルですか?」
ザ・アンドロイドが訊ねる。
彼は私の婚活を知っている。よりにもよって、見合いをガッツリ見られてしまったのだ。当然と言えば当然だ。その日の見合い会場は、彼の店だったのだから。
それ以来、こんな風にチクチク言葉を掛けてくる。
早くこの場を退散したい私は、ハイと肯定し、立ち去ろうとするが、どうも彼はそれを許してくれないようだ。
三十六歳、独身、そして、このマスクだ、話題に上らないわけがない。彼が載った雑誌を何度か見たことがある。
彼を特別講師に推薦したのは、御年六十八歳ながら少女のような味食会長夫人。
夫人宣わく、「彼ね、社長でもあるけど、ヨーロッパの三つ星レストランで修行を積んだ料理人でもあるの。それを眠らせちゃうのは惜しいでしょ」だそうだ。
夫人の願いは叶い、葛城圭介が颯爽と講師デビューしたのが五年前、くしくも私がアイツにフラれた年だ。明と暗。本当に彼と私は水と油だ。そんなこんなで、苦手意識は募るばかりだった。
「また、隣のビルですか?」
ザ・アンドロイドが訊ねる。
彼は私の婚活を知っている。よりにもよって、見合いをガッツリ見られてしまったのだ。当然と言えば当然だ。その日の見合い会場は、彼の店だったのだから。
それ以来、こんな風にチクチク言葉を掛けてくる。
早くこの場を退散したい私は、ハイと肯定し、立ち去ろうとするが、どうも彼はそれを許してくれないようだ。