お見合い結婚狂騒曲
ああ、と軽く頷き、「デザートは決まったのか?」と訊く。
「決まりました」と言うと、呼び出しボタンを押す。

「彼女は、とある会社の社長で、仕事を交えた食事会で三回会った」
「ちょっと待って下さい。それって付き合っていたんですか」

「一応な」と葛城圭介が言う。

「失礼します」と廊下側から声が聞こえ、障子が開く。顔を出した店員さんにデザートを注文する。そして、障子が閉まると、葛城圭介は、また話し始める。

「相手から結婚を前提に付き合って欲しい、と一回目の食事会で言われた。僕も瑠璃には、ほとほと困っていたので承諾したのだが、契約が締結した途端、フラれた。どうやら、彼女には恋人がいたようだ」

それって……。

「契約のために騙されたってことですよね」
「そうだろうね」

何をシレッと宣っているのだ、ここは怒るところだろう!

「ショックは無かった。むしろ、契約はウチに有利に運んだからね、喜ばしいことだった」

ーーダメだ、この人、本物の仕事人間だ。

「だが、相手の男が僕より少しだけ収入が上だった。それがどうにも癪に触って……君に八つ当たりしていた」

あの時の、より条件の良いっていう台詞……なるほど、だからか、なんて負けず嫌いなんだ。

「それって総合すると、彼女が好きではなかった、ということですよね。本当、意味分かんないです。好きでもない人とどうして結婚できるんですか」
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