手を伸ばして、くっついて。
昼過ぎから雨が降ってきて、窓を濡らす水滴は流れ、隣のと触れて、一回り大きくなった。
まるで手を伸ばし合って、引っ張り合って、くっつくように。

天気予報ではホワイトクリスマスになると言っていたが、どーなんだろ?
うちの田舎じゃあ、ドカドカ降って当たり前だから、別に珍しくもないんだけども。


「じゃあ俺、取引先行ってきます」


フロア中に響く声で言った衛藤は、「いってらしゃい」と返した女子社員たちに、にこっと笑って見せた。

まぁた、あんな軽装で……。

どうしてコートを着ないの?って前に聞いたら、邪魔だから、と言ってた。
確かに脱いだり着たり、手に持ったり雨に濡れたら裏返したり、面倒なのはわかるけど。
雨降ってるし、雪になりそうだし。これからの時期、風邪でもひいたら厄介だろうな。

うちの会社はお酒を取り扱ってるので、クリスマスから年末にかけてはかなり忙しい。
販売店で足りないものを聞いて回ったり、必要であれば接客を手伝ったりもする。

同期の衛藤は人当たりが良くって営業成績が課の中でもトップなので、引く手数多というか、とにかく忙しいみたい。
いろんな意味で。


「衛藤さん、今夜の飲み会のこと忘れてませんよね?」


私と同じ営業事務の田所さんが、わざわざ衛藤のところまで駆けてって、腕をちょんと小突いた。
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