手を伸ばして、くっついて。
「い、いきなりなにするのよ! びっくりしたじゃない!」
腕を掴まれたまま、驚きでドキドキドキドキ忙しない鼓動をなんとか落ち着かせる。
ふざけるのも大概にして。
忍者みたいに身を隠していきなり捕まえるなんて。心臓止まるかともったわ。
ふう……深呼吸。
「っていうか衛藤、コートくらい着て行きなよ。降り始めの濡れ雪だから、傘もあった方がいいと思うよ?」
と、なんとかいつもの調子で冷静に言えた私は、こっそり自分を褒めながら至近距離の衛藤を見上げた。
すると相手は真顔だった。
ふざけてなんか、いなかった。
「__え、と……?」
「俺も好きだよ、菅井のこと」
ぎゅうっと、大胆に。
衛藤は私を抱きしめた。
目が回る。息苦しい。
衛藤の体が、私と密着している。
「っえ!」
なにがなんだか。どうなってんのよこれ!
生きた心地がしないんですけど⁉︎
しかも、なんか言ったよね。
変、だったよね?
「お、お、俺……も?」
好き?
って、どういうことよ。
俺も、好き?
てことはつまり、私も__?
「__ひいぃ!」
な、なぜそれを⁉︎
時間差で悲鳴をあげると、衛藤は私の体との間に、拳ひとつぶんくらいの狭い隙間を作った。