手を伸ばして、くっついて。

「え? だって、さっき口パクで……。菅井、言っただろ? 〝好き〟って」


窮屈そうに首を傾げ、穏やかな眼差しを私に向けた。

……き、聞き間違いだけどあながち間違ってないし!


「わ、私〝雪〟って言ったの! 雪降ってるよ、って!」
「え、うっわーーー恥!」


少し笑いを帯びた、余裕っぽい声で言った衛藤は、それでも恥ずかしそうに一旦は顔を背け、それからこう言った。


「でも俺、ずっと菅井のこと好きだったから、いつか伝えたいと思ってて」


真っ直ぐに見つめられて、目を反らせない。


「これもチャンスかもって、前向きに考えてる」


なにこれ、夢?
妄想じゃないよね?

めちゃくちゃ恥ずかしいのに。めちゃくちゃ嬉しい。


「菅井の、だよな? これ」
「え? こ、これ?」
「この、心臓の音。」


私の体を両手ですっぽりと抱きすくめたまま。


「こんなにドキドキしてるのは、こういう状況に免疫がないからなのか、それとも、」


そこで言葉を切った衛藤は、ぽかんと見上げる私を見つめ、ふっと頬を緩めた。


「俺、期待していいのかな」
「……えっ……」


どっちも、合ってる。
どっちも合ってるんだもの。

男性経験なし。
衛藤に片思い歴、丸六年。
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