手を伸ばして、くっついて。
「ええと……っ」
顔だけがやたら熱い。
身体中の熱がもう総動員で、全部顔に集まってきちゃったみたい。
正気を保てなくなって、せっかく築いてきたいつもの冷静さなんて、やわいガラスみたいにパリパリパリパリ……足元に散る錯覚が見えそうで、頭が混乱してヤバい。
私は思わず両目をきつくつむった。
「やべ。健全な男子の前でそんな可愛い反応されたら、舞い上がってキスとか要求したくなるんだけど」
ちゅ、っと。
小さな音がして、頬に温もりがともった。
「ごめん、調子に乗りました。」
茹で蛸の抜け殻みたいな私の頭に、ぽんと手を乗せた衛藤は、体を離す直前。「今夜、空けといて?」耳元で囁いた。
「え……飲み会は? 田所さんの」
意識の縁の、ぎりぎり冷静な部分が働いて、私は目の前に立つ衛藤に向かって呟いた。
「だって俺、たった今、あの飲み会に参加できる資格を失ったから」
じゃ、いってくるね。と付け足して、最後にもう一度軽くハグする。
すっかり気を抜いてた私の心臓は、爆発したみたいにばくん! と大きく打った。
背中をぽんぽんとあやすように叩く衛藤の口から、くくっと笑い声が漏れる。
「ひ、ひどい、意地悪……っ!」
「え? なにが?」
なにが、って。
反応、面白がってるでしょ絶対!
でも、そういう衛藤もけっこうドクドクいってるから。まるで手を伸ばし合って、引っ張り合って、くっつくように。ふたりの鼓動が重なって、胸の高鳴りが増幅する。
聞き間違えてくれて、ラッキーだったかも、なんて。
現金なことを思った、クリスマスの奇跡?のお話。
終わり