君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
3通目の相手は先輩だった。
吹奏楽部の部長でかなりの有名人らしく、名前もはじめて聞いたと正直に言うと、深月にかわいそうなものを見る目をされた。
「吹奏楽部なら音楽室行けば捕まえられるんだから楽じゃん」
探さなくて済むのはラッキーだ。時間短縮になる。
部活が始まるまで残り20分。急げばギリギリ間に合うはず。そう思ってたのに……。
「うちの部なら、今日は外で練習だぞ。週に1度のマラソンの日だ」
締まってしる音楽室の前で困っていたあたしたちに、準備室から出てきた吹奏楽部の顧問が教えてくれた。
吹奏楽部も運動するなんて知らなかった。
あたしたちは無言で廊下を駆ける。
時間短縮どころか、大幅なロスだ。嫌な汗が背中を伝う。
「吹奏楽部なのに! なんで! マラソンなんかするわけ!?」
「知るかよ! 肺活量とか、そんな感じだろ!」
「なに肺活量って! どんだけ息が続くかみたいなやつじゃん! 吹奏楽部関係なくない!?」
「だから知らねーって!」
剣道以外なにも知らないあたしたちは、言い合いしながらひた走る。