君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている

優ちゃんがいない剣道部なんて想像もつかない。それはあたしの好きな剣道部とは、全然別物な気がする。

夏が終わる頃には、こうして夜の帰り道を3人並んで歩くこともなくなるなんて。そんなの考えたくもない。


深月はどうなんだろう。どうするつもりなんだろう。

優ちゃんに憧れて剣道を始め、優ちゃんを追いかけてうちの剣道部に入った深月は、優ちゃんがいなくなった剣道部に何を思うだろう。


優ちゃんの厳しい声が響かない、頼ろうとしても相談することもできない、部の中心で柱でもある優ちゃんがいなくなったら……。


まさか辞めたりなんて、しないよね?



「大丈夫だよ。俺がいなくなっても、意外と何も変わらないさ」

「そんなわけないじゃん……」

「そうかな。案外お前たちの方が、俺よりずっと上手くやっていけると思うよ。本当に」


そう言った優ちゃんの声は寂しげで、そしてどこか投げやりに聴こえた。

もう一度「そんなわけないじゃん」って言うしかなくて、それ以上かける言葉は見つからなかった。

深月も黙って、そんなあたしたちを見つめるだけ。


手の中のモナカは、中のアイスが溶け、ぐにゃりとふやけはじめていた。



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