君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている



若干気まずいまま優ちゃんと別れ、家のそばの十字路を曲がった時。少し離れた街灯の下に停まった黒いワゴン車のドアが開いた。

車内で爆音で音楽が流れているようで、静かな住宅街に不似合いな騒音が響く。


ちょっと恐いなと思っていると、後部座席から人が降りてきた。

見覚えのあるセーラー服を着た女子生徒の姿にギョッとする。あれ、まさか智花?


血の繋がらない妹のまさかの登場に、思わずあたしは電柱の影に身を隠していた。

智花が何か車内に向かって声をかけると、開いたままのスライドドアから細い手が智花に向かって軽く振られたのが見えた。


ドアが閉じると同時に、ワゴン車は迷惑なマフラー音を轟かせて勢いよく走り去っていった。

それを見送って智花が歩き出したところで、あたしも電柱の影から出て妹に駆け寄った。


「えっ。歩……」

「智花。いまのって、智花の友だち?」


真面目な智花の友だちが乗るにしては、随分と問題のありそうな車だった。

それに車に乗る年齢なら、智花より年上ってことになる。

智花は部活にも入ってないし、これまで先輩と仲良くしてるのを見たこともない。

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