君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
不思議だなと思ってると、智花はなんでもないといった風に笑った。
「いまの、友だちのお兄さんの車。友だちの家で勉強させてもらってて、遅くなったからって送ってくれたの」
「ふーん、そっか。さすが智花はえらいね。こんな時間まで勉強なんて」
「歩だってこんな時間まで部活でしょ? えらいじゃん」
「あたしは好きでやってるだけだから、別にえらくはないんだよねー」
証拠に、お母さんは部活で遅く帰ってくるあたしを労いはしないけど、勉強で遅くなった智花のことはこのあとこれ見よがしに労うんだろう。
なにせ学生の本業は、勉強らしいから。
別れ際に見た、優ちゃんの何かに疲れたような顔を思い出す。
「ねえ、智花」
「え? なに?」
家の門に手をかけながら、智花があたしを振り返る。
軽く首を傾げると、さらりと流れて落ちる黒髪。どこからどう見ても、優等生なあたしの義理の妹。
「……いや、何でもない」
あたしはいま、智花に何を聞こうとしたんだろう。
優ちゃんに似てる智花になら、何かわかるとでも思ったんだろうか。