君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
「それはわかってる! ほんとに迷惑かけてるなって思うし、ごめん」
「次の土曜、支部戦だぞ? 本当にわかってんのかよ」
「乗りかかった船ってことでさ……ダメ?」
「無理やり乗船させられたようなもんだけどな」
「も、申し訳ない……。反省はしてる。もうあんなに時間かけたりしないから、お願いします!」
クラスメイトにちらちらと見られながら、勢いよく土下座した。
周りが一気にざわついたけど、当の深月はあたしの土下座なんか見慣れたものだから、動揺なんてするはずもない。
「やっすい土下座なんていらねーんだよ。アイス奢れ。もちろん金はお前が出せよ」
絶対主将には出させるな、と念押しされて、黙ってコクコク頷く。でも、あたしの土下座はアイス以下かって複雑な気分にもなった。
「歩。恋する乙女の為にがんばって!」
「また奇跡、起こしてきてよ!」
加奈子や樹里、クラスメイトたちにそんな応援をされて、引きつった笑いを浮かべながら「あたしは渡すだけなんだけどね」と予防線を張っておく。
誰も聞いちゃいなかったけど、深月だけは「バーカ」と鼻で笑っていた。深月の「バーカ」を、これほど心地よく感じたことはない。
深月の存在に安心する日が来るなんて、思わなかった。