君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
困ったような声で言われてそうすると、樹里がなぜか感心したような顔であたしを見ていた。
「え。……なに?」
「いや、びっくりしちゃって。あんまり綺麗なお辞儀だったから」
さすが剣道部だねって褒められて、ようやく笑って肩から力が抜けた。
樹里のこういうとこ、好きだなって思う。楽……っていうのとはちょっと違うか。心地良いんだ、きっと。
あたしのいる段に、樹里も立つ。肩をはげますように叩かれて、同時に歩き出した。
「それにしても……やられたーって感じたわ」
「やられた? 何に?」
「矢田くんだって。さっきの、さらっと助けてくれちゃってさ。さすがにあたしも一瞬ときめいた。かっこよすぎ」
冗談めかしてそう言った樹里に、あたしも笑って「やめてよねー」と返す。
樹里は見えてなかっただろうけど、あの時アイツ、あたしのことものすごく冷たい目で睨んでたんだから。
深月……怒ってたな。
クラスメイトとして、同じ剣道部員として、仲間として、あたしの態度はさぞかし腹立たしかったんだろう。
でも深月だけが真っ直ぐに、あたしを諫めてくれていた。
「間違ってる、直せ」って、体当たりで伝え続けてくれていた。