君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
沈みゆく秘色
◆
もっと惰眠を貪る予定が、あまりの蒸し暑さに起こされた。
汗ばんだTシャツの胸元を引っ張って、扇ぐように揺らしながら階段を降りていくと「あら、いたの?」とリビングにいたお母さんに驚かれる。
「いたのって、ひどくない? 娘が寝てることに気付いてなかったの?」
「だってあんまり静かだし、あんた休みっていったら剣道ばっかりで家にいないじゃない」
「顧問が急用が入ったから、部活は休みだって昨日言ったじゃん」
「そうだったっけ?」
とぼけながら、お母さんはテレビを観つつ洗濯物を畳んでいる。すいすいっと畳んでいくその手際の良さに、器用だなあと感心した。
あたしがやると、どうしても左右のバランスが悪くなったり、積むとすぐ崩れたりで怒られる。それで結局手伝わなくなったんだけど。
「智花は?」
「お友だちと勉強会だって。さっき出かけてったわよ」
「ふーん……」
またあの騒音をまき散らす車に送られ帰ってくるんだろうか。
お母さんが知ったら卒倒しそうだな、なんて考えながらキッチンに立つ。
「ねー。あたしの朝ご飯は?」
「ないわよ、そんなの」
「え~っ!?」
もっと惰眠を貪る予定が、あまりの蒸し暑さに起こされた。
汗ばんだTシャツの胸元を引っ張って、扇ぐように揺らしながら階段を降りていくと「あら、いたの?」とリビングにいたお母さんに驚かれる。
「いたのって、ひどくない? 娘が寝てることに気付いてなかったの?」
「だってあんまり静かだし、あんた休みっていったら剣道ばっかりで家にいないじゃない」
「顧問が急用が入ったから、部活は休みだって昨日言ったじゃん」
「そうだったっけ?」
とぼけながら、お母さんはテレビを観つつ洗濯物を畳んでいる。すいすいっと畳んでいくその手際の良さに、器用だなあと感心した。
あたしがやると、どうしても左右のバランスが悪くなったり、積むとすぐ崩れたりで怒られる。それで結局手伝わなくなったんだけど。
「智花は?」
「お友だちと勉強会だって。さっき出かけてったわよ」
「ふーん……」
またあの騒音をまき散らす車に送られ帰ってくるんだろうか。
お母さんが知ったら卒倒しそうだな、なんて考えながらキッチンに立つ。
「ねー。あたしの朝ご飯は?」
「ないわよ、そんなの」
「え~っ!?」