君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
いままで智花の周りでは絶対に見なかったタイプだ。というか、智花が苦手にする種類の人間なはず。
そこに同じように派手な男が4人合流して、しばらくその場で騒いだあと、7人は移動を始めた。
もうそれを追いかけようという気持ちにはならなかった。
彼らの輪の中で笑顔を振りまく智花が、あたしの知ってる智花じゃなかったから。
本当に別人に見えたから、足が動かなかった。
あれがいまの、智花の高校の友だち? それとも学校とは別のところで出来た友だち?
行動範囲の狭い、知り合いの少ない智花が、学校外でどうやってあんなタイプの人間と出会うっていうんだろう。
昨日と同じくらい暑い夏日なのに、日差しの下であたしは震えた。
さっき智花の背中に親し気に手をやっていた男の腕に、黒い蔦みたいな入れ墨があった。
別に入れ墨をする人が全員悪人とは思わないけど、ちらっと見えた横顔は嫌な感じがした。信用できないタイプの人間だって、ひと目でわかるくらい。
智花をたぶらかそうとする、蛇に見えた。それはあたしの勝手な思い込みだろうか。
後ろから来た人にぶつかるまで、あたしはその場に立ち尽くしていた。