君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
どこまでもこの男は優ちゃん基準だ。
なんでも中学の時の、優ちゃんの試合を見て感動し、剣道を始めたらしい。
この高校を選んだのも当然優ちゃんがいるからで、面接でも「剣道部の白木優一郎さんに憧れて選びました!」と堂々と言ってのけたのは有名だ。
剣道部の顧問がいまだにその話をして笑っている。
それはもう剣道一筋っていうか、優ちゃん一筋って感じ。
「うーん。俺はなあ、別にそういうんじゃないからな」
「なに言ってんすか。実際主将が声をかけて、断る女はいないでしょ」
「そうでもないよ。俺もフラれた経験あるし」
「はぁ!? 冗談ですよね? 白木主将をフる女がこの世にいるんすか?」
深月の声がぐっと低くなる。
まるでそんな女がいるなら抹殺してやる、と言わんばかりだ。
「いや、フラれたっていうか……フラれることすら出来なかった。って言う方が正しいかな」