君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている

「だったら恋愛でいいだろ、わかりやすい。お前は奇跡を起こす剣道小町なんだろ? 自分で好きですって手紙書いて主将に渡せば、大好きな幼なじみはお前のもんだ」


冗談を言ってるってことはわかってる。全然わらえないけど。

あたしは優ちゃんを自分のものにしたかったんだろうか。変わってほしくない、このままでいたい。その気持ちは恋愛に繋がるんだろうか。


束縛に近いその想いを、恋愛以外に例えることは不可能なのか。


「奇跡なんて起こしてないよ。知ってるじゃん。あたしは手紙を渡してるだけ」

「でもみんな言ってる。お前に頼めば恋が叶うって。実際そうなんだろ? 偶然もそこまで続けば奇跡なんじゃねーの」

「深月までそんなこと言うなんてね。なに? あんたも奇跡を起こしてほしいの?」


それは口にするつもりのない言葉だった。

なのに脳裏にさっきの樹里といる深月の姿が浮かんで、つい嫌味のようにこぼれてしまった。


一度発した言葉は取り返すことが出来ない。そんな当たり前のことを後悔する時が来るなんて。


「ん……まあ、そんな感じ?」


照れくささを誤魔化すように、ふざけた調子で答えた深月に唖然とした。

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