君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
「え……冗談、だよね?」
搾りかすのような情けない声が出た。引きつった頬が更に震える。
深月は不機嫌そうな顔でズボンの尻ポケットから、少しシワになった白い封筒を取り出した。
無言で差し出されたそれを、あたしにどうしろと言うんだろう。
「ば……っかじゃないの? これを頼むの? あんたが、あたしに?」
ありえない展開になぜか笑いがこみ上げてきた。
あの深月が、あたしにラブレターを託すって、一体なんの冗談? あれだけ他人の恋愛事に首突っ込むなとか、そういうのは本人が渡すもんだって、あたしのやってることを否定してたくせに。
奇跡なんてバカげてるって、鼻で笑ってたくせに。くだらないって、冷めた目で見てたくせに。
渋々協力しているうちに、その考えも変わったってこと?
自分が恋をしたから、使えるものは使っとけって?
「ふざけんな。自分で渡しなよ」
いまだ腕を掴んでいる熱い手を振り払って、背を向ける。
でも追いかけてきた手に再び手首をとられ、無理やりその薄くて重い封筒を握らされた。
「頼む」