君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている
いまだに熱気と汗くささが残る剣道場が、一瞬シンと静まり返る。
あたしは無意識のうちに、モップの柄をへし折りそうなくらい、強く握りしめていた。
「えーと……どういう意味ですかね? 俺頭悪いんで、わかんないんすけど」
「はは。昔の話だよ。ほら、手も足も止まってるぞ。さっさと終わらせないと、ここ閉められないだろ」
いつも通りの笑顔で、優ちゃんがモップをぐんと前に出す。
これ以上は話さない、とその背中は拒否を示していた。
「なぁ。いまのどういう意味かわかった?」
「……さぁね」
「つーかお前、ずっと主将と一緒だったんだろ? なら何か知ってんじゃねーの?」
「知らないよ。恋愛話なんてキョーミないし」
「使えねぇな」
「うっさいわ! この優ちゃんバカ!」
あたしが振り上げたモップを避けて、深月は優ちゃんを追いかけていった。